1花粉症治療の種類
花粉症の治療には4つの大きなカテゴリがあります。症状の出方や生活スタイルに合わせて、これらを組み合わせていきます。
内服薬
抗ヒスタミン薬
ロイコトリエン拮抗薬
点鼻・点眼薬
ステロイド点鼻
抗アレルギー点眼
漢方薬
症状・体質に合わせた
5処方
注射療法
ノイロトロピン
ヒスタグロビン・ゾレア
2抗ヒスタミン薬
花粉が体内に入ると免疫系が過剰に反応し、ヒスタミンが放出されます。ヒスタミンが受容体に結合することでくしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状が出ます。抗ヒスタミン薬はこの結合をブロックすることで症状を抑えます。
薬によって眠気の出やすさ・運転可否・服用回数が異なります。生活スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
| 薬品名 | 成分名 | 眠気 | 車の運転 | 服用回数 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|
| ◎ 眠気が出にくい・運転可(添付文書上の制限なし) | |||||
| アレグラ | フェキソフェナジン | ほぼなし | ○ 可 | 1日2回 | 6ヶ月〜使用可 |
| クラリチン | ロラタジン | ほぼなし | ○ 可 | 1日1回 | 3歳〜使用可 |
| デザレックス | デスロラタジン | ほぼなし | ○ 可 | 1日1回 | 妊婦への使用実績あり |
| ビラノア | ビラスチン | ほぼなし | ○ 可 | 1日1回 | 食事の前後2時間は避ける(空腹時服用) |
| △ 眠気が出ることあり・運転は注意が必要 | |||||
| アレジオン | エピナスチン | 少ない | △ 注意 | 1日1〜2回 | |
| タリオン | ベポタスチン | 少ない | △ 注意 | 1日2回 | |
| ▲ 眠気が出やすい・運転不可 | |||||
| ザイザル | レボセチリジン | やや多い | × 不可 | 1日1回(就寝前) | 6ヶ月〜使用可・妊婦実績あり |
| アレロック | オロパタジン | やや多い | × 不可 | 1日2回 | 2歳〜使用可 |
| 貼り薬(テープ剤) | |||||
| アレサガテープ | エメダスチン | やや多い | × 不可 | 1日1回(貼付) | 内服が難しい方・飲み忘れが多い方に |
*眠気・運転可否は各薬の添付文書に基づきます。個人差がありますので、初めて服用する際は様子をみてください。
*ビラノアは食事の影響で吸収が大きく変わるため、食前30分以上前の服用が推奨されています。
3ロイコトリエン受容体拮抗薬
もともと気管支喘息の治療薬として開発された薬で、鼻づまりに対して特に効果的です。抗ヒスタミン薬と併用することで鼻閉症状の改善が期待できます。代表薬はモンテルカスト(シングレア・キプレス)で、就寝前に1錠服用します。
- 気管支喘息を合併している方には特に有効です
- 眠気の副作用は少なく、運転への影響はほぼありません
- 抗ヒスタミン薬との併用で鼻づまりへの効果が増します
4点鼻薬
点鼻薬には大きく2種類あります。
血管収縮薬(市販品に多い)
即効性はありますが、使い続けると薬剤性鼻炎(反跳性鼻閉)を起こすことがあります。市販の点鼻薬には多く含まれており、長期連用は推奨されません。
連続使用5〜7日以内が目安です。長期使用で症状が悪化することがあります。
ステロイド点鼻薬(医療機関処方)
現在の花粉症治療の主流です。「ステロイド」という名称から副作用を心配される方が多いですが、点鼻薬に含まれる量は非常に微量で、全身への吸収もほとんどありません。鼻の粘膜に直接作用するため、局所的に高い効果を発揮します。
| 製品名 | 成分 | 剤形 | 用法 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| アラミスト | フルチカゾンフランカルボン酸エステル | 霧状ミスト | 1日1回 | 鼻への刺激が少なく使いやすい |
| エリザス | シクレソニド | 粉末 | 1日1回 | 液体が苦手な方・刺激を感じやすい方に |
| フルナーゼ | フルチカゾンプロピオン酸エステル | 液体 | 1日2回 | 長年使われてきた実績豊富な製品 |
| ナゾネックス | モメタゾンフランカルボン酸エステル | 液体 | 1日1回 | 2歳から使用可能で小児にも広く使われる |
*ステロイド点鼻薬の安全性は日本アレルギー学会のガイドラインでも確認されており、適切な使用量では全身への影響は生じないとされています。
5点眼薬・アレジオン眼瞼クリーム
点眼薬
目のかゆみ・充血・流涙には点眼薬が有効です。抗アレルギー点眼薬(アレジオン点眼、パタノール点眼など)を基本とし、症状が強い場合はステロイド点眼薬を短期間追加することがあります。
アレジオン眼瞼クリーム(新薬)
まぶたの上下に指でなじませるだけで目のかゆみを抑える、新しいタイプの外用薬です。1日1回の塗布で効果が持続します。
- 目薬が苦手な方・させない方に
- コンタクトレンズ装用中でも使用可能(目薬は外す必要あり)
- 点眼を嫌がるお子さんにも使いやすい
- 眼圧への影響がない(ステロイド点眼薬は長期使用で眼圧上昇のリスクあり)
6漢方薬治療
漢方薬は症状の種類や体質・体力に合わせて選ぶことが重要です。「水っぽい鼻水か、詰まりが強いか」「冷え性か、熱感があるか」などによって使う処方が変わります。以下の5処方が花粉症で使われることが多く、当院でも処方しています。
小青竜湯
透明でサラサラとした鼻水、くしゃみが止まらない症状に使います。花粉症漢方の第一選択として広く使われており、錠剤・顆粒の剤形があります。妊娠中の使用実績も豊富で、胎児への異常報告はありません。
葛根湯加川芎辛夷
慢性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)に伴う鼻づまり、頭が重い感じに用います。体を温める作用があり、冷えが強い方に向いています。
荊芥連翹湯
慢性的な炎症があり、粘り気のある黄色〜黄緑色の鼻水が出る方に用います。中耳炎・ニキビ・扁桃炎を繰り返す方にも使われます。
辛夷清肺湯
鼻がほぼ詰まって口呼吸になる方、においがわかりにくくなった方に向きます。熱がこもりやすい体質の方に使います。
麻黄附子細辛湯
冷えが強く、温度変化でくしゃみ・鼻水が出やすい方(温度差アレルギー)に効果的です。カプセル剤もあります。
7治療開始のタイミング
花粉が飛び始めた頃、または飛散開始の情報が出た頃からの服用開始をお勧めしています。抗ヒスタミン薬などは服用から安定した効果が出るまで1〜3日かかるため、症状が強くなってからでは対応が遅れます。
- スギ花粉症:2月上旬〜4月中旬ごろ
- ヒノキ花粉症:3月上旬〜5月上旬ごろ
- イネ科(カモガヤなど):5月〜7月ごろ、9月〜10月
*飛散情報は日本気象協会「花粉情報」や環境省「花粉観測システム(はなこさん)」で確認できます。
8妊娠中・授乳中の花粉症治療
妊娠初期(16週頃まで)はできる限り内服薬を控え、点鼻薬・点眼薬など局所療法を優先します。妊娠中期以降は下記の抗ヒスタミン薬が比較的安全に使えるとされています。
| 薬品名(成分) | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| クラリチン(ロラタジン) | △ 比較的安全 | △ 注意 | 海外で最も使用実績が多い |
| デザレックス(デスロラタジン) | △ 比較的安全 | △ 注意 | ロラタジンの活性代謝物 |
| アレグラ(フェキソフェナジン) | △ 比較的安全 | △ 注意 | |
| ザイザル(レボセチリジン) | △ 比較的安全 | △ 注意 | |
| 小青竜湯(漢方) | △ 使用実績あり | △ | 胎児異常の報告なし |
「比較的安全」とされる薬でも、妊娠週数や個別の状態によって異なります。当院では妊娠中・授乳中の方への処方を行っています。お気軽にご相談ください。
9小児の花粉症治療
小児への薬の使用は年齢によって適応が異なります。低年齢ほど使える剤形(シロップ・顆粒)や薬が限られますが、適切な薬を選ぶことで症状をしっかりコントロールできます。
| 薬品名(成分) | 使用可能年齢 | 剤形 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アレグラ(フェキソフェナジン) | 6ヶ月〜 | ドライシロップ・錠剤(7歳〜) | 眠気少なく運転可。小児での使用実績豊富。 |
| クラリチン(ロラタジン) | 3歳〜 | 顆粒・口腔内崩壊錠(7歳〜) | 1日1回。眠気が出にくい。 |
| ザイザル(レボセチリジン) | 6ヶ月〜 | シロップ・錠剤(7歳〜) | 1日1回就寝前。低年齢からシロップで使用可。 |
| アレロック(オロパタジン) | 2歳〜 | 顆粒・錠剤 | 眠気に注意。効果が強い。 |
アレジオン眼瞼クリームは、点眼を嫌がるお子さんに特に有効です。まぶたに塗るだけで目のかゆみを抑えられます。
*小児の治療は年齢・体重・症状の程度により医師が判断します。自己判断での市販薬使用はご相談ください。
*薬の剤形はご家族・本人のご希望に沿いますので、診察時に医師へお伝えください。
10注射療法
内服薬・点鼻薬でコントロールが難しい場合や、より強力な効果を希望する方に注射療法を提案しています。当院では3種類の注射に対応しています。
ノイロトロピン注射
保険適応あり回数週1〜2回 計4〜6回
費用目安初回 約1,100円/2回目〜 約500円
制限妊婦・小児は不可
詳しく見るヒスタグロビン注射
保険適応あり回数週1〜2回 3週で1クール
費用目安初回 約1,400円/2回目〜 約1,000円
制限妊婦・月経中は不可・献血3ヶ月不可
詳しく見るゾレア注射
保険適応あり(条件あり)回数2〜4週ごと
費用目安体重・IgE値により 約12,000〜18,500円+診察料
制限12歳以上・厳格な適応基準あり
詳しく見るノイロトロピン注射
鼻の粘膜にあるアセチルコリン受容体の反応を和らげ、アレルギー反応の原因となる好酸球の活動を抑えることで花粉症症状を改善します。血行促進・疼痛緩和の作用もあるため、肩こりや冷え性を合併している方にも向いています。
- 投与量:3.6単位 / 1回
- 投与頻度:週1〜2回、1シーズンに4〜6回が目安
- 費用(3割負担):初回 約1,100円、2回目以降 約500円(保険適応)
妊婦・小児への投与は承認されていません。
ヒスタグロビン注射
ヒスタミンと免疫グロブリンを組み合わせた製剤で、「非特異的減感作療法」に分類されます。スギなど特定のアレルゲンに対してではなく、アレルギー反応全般に対する感受性を下げる効果があるため、複数のアレルゲンに反応する方にも有効です。
- 特定のアレルゲンに関わらず、全般的なアレルギー過敏性を低下させる
- 3週間で1クール。効果はその後1〜2ヶ月持続することが多い
- シーズン前(1〜2月)からの開始が効果的
- 投与量:1バイアル(1.5mL)/ 1回、皮下注射
- 投与頻度:週1〜2回、3週間で1クール
- 費用(3割負担):初回 約1,400円、2回目以降 約1,000円(保険適応)
月経中・妊娠中は投与できません。気管支喘息の急性発作中は投与を避けます。投与後3ヶ月間は献血ができません。
ゾレア注射(オマリズマブ)
ヒト化抗IgEモノクローナル抗体製剤です。IgE(アレルギー反応を引き起こす抗体)に直接作用して、アレルギー反応の根本を抑えます。重症の季節性アレルギー性鼻炎に対して保険適応があります。
市販薬のみで治療してきた方はすぐに投与できません。まず医療機関で処方薬による治療が必要です。詳細な適応条件・治療の流れは専用ページで解説しています。
根本から改善したい方へ:舌下免疫療法
上記の対症療法・注射療法のほか、花粉症・ダニアレルギーの根本的な体質改善を目指す治療として舌下免疫療法(シダキュア®・ミティキュア®)があります。保険適用で、渋谷・表参道のしおざき内科で随時受付しています。
舌下免疫療法の詳細はこちら →
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