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男性更年期障害(LOH症候群)

2022年診療ガイドライン改訂について
  • 日本泌尿器科学会・日本Men's Health医学会の2022年改訂版により、LOH症候群の診断基準が変更されました。当院では改訂後の最新基準にもとづき診断を行っています。
  • 「なんとなくつらい」「気力が出ない」などの症状でも、まずはお気軽にご相談ください。甲状腺疾患や精神疾患との鑑別も含め、男性医師(副院長)が丁寧に診察します。
LOH症候群(男性更年期障害)とは

LOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群とは、加齢にともなう男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる症状の総称です。「男性更年期障害」とも呼ばれ、40代以降の男性に多くみられます。

テストステロンは筋肉・骨・性機能の維持だけでなく、気力・集中力・情緒の安定にも深く関わっています。加齢とともに緩やかに低下するため、「疲れやすくなった」「やる気が出ない」といった変化を年齢のせいと見過ごしてしまうケースが少なくありません。

女性の更年期との違い

女性の更年期はホルモン値が急激に低下するのに対し、男性のテストステロンは年に1〜2%程度ずつ緩やかに低下します。そのため症状が徐々に進行し、本人も気づきにくいのが特徴です。

✅ こんな症状はありませんか? — セルフチェック

以下の項目に3つ以上あてはまる方は、LOH症候群の可能性があります。血液検査で正確に調べることができます。

気になる症状をチェックしてください

気力・やる気・活力の低下
慢性的な疲労感・体力低下
気分の落ち込み・憂うつ感
イライラ・神経過敏・不安感
眠りが浅い・睡眠の質の低下
集中力・記憶力の低下
性欲の低下・勃起力の低下
朝の勃起(朝立ち)が減った
関節痛・筋肉痛・肩こり
ほてり・発汗・のぼせ
体型の変化(腹部の脂肪増加・筋肉の減少)
ひげの伸びが遅くなった

※あくまで参考です。確定診断には血液検査が必要です。甲状腺疾患・うつ病など他の疾患でも同様の症状が出ることがあります。

AMS(Aging Males' Symptoms)スコアについて

LOH症候群の症状評価に国際的に用いられる17項目の質問票です。診察時にご記入いただき、治療前後の変化の比較にも活用します。

合計スコア 評価 目安
26点以下 症状なし LOH症候群の症状は認めない
27〜36点 軽症 生活習慣の改善・経過観察が中心
37〜49点 中等症 血液検査・治療の検討を推奨
50点以上 重症 積極的な治療の検討を推奨

※AMSスコアは症状の参考指標です。EAU(欧州泌尿器科学会)のガイドラインでは、スクリーニング単独での診断には推奨されておらず、血液検査との組み合わせが必須です。

診断方法・診断基準

検査の流れ

① 初診時に症状の問診(AMSスコア記入)
② 血液検査(テストステロン・PSA など)
③ 必要に応じて甲状腺機能・肝機能・血糖値なども確認(保険適用)
④ 結果をもとに医師が診断・治療方針をご説明

採血は午前中(7〜11時)にお越しください

テストステロンは午前中にピークを迎え、夕方にかけて低下します。正確な値を測るため、できるだけ午前中・空腹時の採血をお願いしています。

診断基準(2022年改訂版 日本泌尿器科学会)

LOH症候群の診断基準(2022年改訂)

主基準 総テストステロン < 250 ng/dL(8.7 nmol/L) ※国際基準に準拠した主要指標
補助基準 遊離テストステロン < 7.5 pg/mL ※旧基準8.5 pg/mL から改訂
参考 遊離テストステロン 7.5〜8.5 pg/mL は「グレーゾーン」として、症状・総テストステロン値を総合して判断します

出典:日本泌尿器科学会・日本Men's Health医学会「LOH症候群 診療の手引き」2022年改訂版

検査費用(自費)

検査内容 費用(税込)
遊離テストステロン 3,500円
遊離テストステロン + PSA(前立腺特異抗原) 5,500円
総テストステロン(必要に応じて追加) 別途ご相談
甲状腺機能・肝機能・血糖値など 保険適用

⚠️ LOH症候群に似た症状を起こす他の疾患

うつ病・甲状腺機能低下症・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群なども、疲労感・気力低下・性機能低下を引き起こします。当院ではこれらの疾患との鑑別診断を重視し、適切な治療につなげます。「血液検査で問題なかった」という方も、別の角度からの検索が有効な場合があります。

治療方法

LOH症候群の治療は、症状の程度・テストステロン値・合併症の有無に応じて選択します。

漢方薬治療
保険適用

症状のタイプに合わせた漢方薬を処方します。副作用が少なく、ホルモン治療が困難な方や軽〜中等症の方に適しています。補中益気湯・八味地黄丸などが代表的です。

プラセンタ注射
自費診療

倦怠感・疲労感の改善に用いる注射療法です。週1〜2回の通院が目安です。TRT(男性ホルモン補充)と組み合わせることもあります。

ED治療薬(PDE5阻害薬)
自費診療

性機能の低下(勃起障害)が主な悩みの場合に処方します。シルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィルのジェネリックも取り扱っています。

→ ED外来のページはこちら

テストステロン補充療法(TRT)
現在 入手困難

テストステロン製剤(筋肉注射)は、現在メーカーの供給困難によりご提供が難しい状況です。入荷状況が改善次第、順次対応を再開いたします。ご希望の方は診察時にご相談ください。

テストステロン補充療法(TRT)の効果 — 最新エビデンス

TRT(Testosterone Replacement Therapy)については、国際的な大規模臨床試験(TRAVERSE試験)を含む多数の研究により、有効性が確認されています。

症状・領域 TRTの効果
性機能(勃起・性欲) 有意な改善。特にテストステロンが低い方で効果が大きい
体組成(筋肉・体脂肪) 除脂肪体重の増加・体脂肪の減少
骨密度 腰椎を中心に骨密度の改善
気分・意欲 軽〜中等度のうつ症状に改善効果あり
インスリン抵抗性・代謝 改善傾向。生活習慣改善との組み合わせで効果的
認知機能 有意な効果は確認されていない

心血管リスクについて — TRAVERSE試験(NEJM 2023)

これまで「テストステロン補充療法は心臓に悪い」という懸念がありましたが、過去最大規模のランダム化比較試験(TRAVERSE試験、5,246名)の結果、TRTは心筋梗塞・脳卒中・心血管死亡リスクをプラセボと比較して増加させないことが示されました(非劣性確認)。

ただし、心房細動のリスクがやや増加する可能性が示されており、EAU(欧州泌尿器科学会)ガイドライン2025年版では心血管リスクの高い方への慎重な適用と定期的モニタリングを推奨しています。NEJM 2023 / EAU Guidelines 2025

生活習慣の改善

薬物療法と同様に重要です。特に肥満・メタボリックシンドロームのある方では、体重10kg減少あたりテストステロン値が50〜100 ng/dL程度上昇するという研究結果があります。

  • 定期的な有酸素運動・筋力トレーニング(週150分以上が目安)
  • 適正体重の維持(特に内臓脂肪の減少が有効)
  • 良質な睡眠(テストステロンは深睡眠中に多く分泌される)
  • 節酒・禁煙
  • 慢性的なストレスの管理

EAUガイドライン2025では、肥満・代謝疾患を合併する場合、TRT開始前に生活習慣介入を推奨しています(強い推奨)。

定期検査・モニタリングについて

TRTを受けられる場合は、安全性の確認のため定期的な検査が必要です。

検査項目 3ヶ月後 6ヶ月後 12ヶ月後 以降毎年
症状・効果の確認(AMSスコア)
テストステロン値
PSA(前立腺特異抗原)
ヘマトクリット(赤血球増多の確認)
脂質・血糖値

ℹ️ PSA値と前立腺について

TRT開始前にPSA検査を行い、PSA 2.0 ng/mL 以上の場合は前立腺がんの除外を目的に泌尿器科専門医へのご紹介を行います。最新の研究では、適切に管理されたTRTは前立腺がんのリスクを増加させないとされていますが、定期的な確認が重要です。EAU Guidelines 2025 / TRAVERSE Trial

TRT の禁忌・慎重投与

区分 内容
絶対禁忌 前立腺がん(局所進行・転移性)/男性乳がん(活動性)/ヘマトクリット 54% 以上/将来の妊孕性を希望する場合
慎重投与 PSA 2.0 ng/mL 以上(要泌尿器科相談)/前立腺疾患の既往/重篤な心疾患・肝疾患・高血圧/睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療を受けている方は相談可)
対象外 テストステロン値が正常範囲の方(ホルモン補充は原則不要)/男性不妊の改善を主目的とする場合

⚠️ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関係

睡眠時無呼吸症候群(SAS)ではテストステロン値が低下することが多く、LOH症状との混在が見られます。SASのCPAP治療を適切に行いながらTRTを並行することで、より高い効果が得られるという研究もあります。SASが疑われる場合は、当院にてSASの検査・CPAP治療も対応しています。

→ 睡眠時無呼吸症候群・CPAP外来のページはこちら

❓ よくある質問
LOH症候群かどうか、受診前に確かめる方法はありますか?
上記のセルフチェックリストやAMSスコアが参考になりますが、確定診断には血液検査が必要です。症状がいくつか当てはまる、あるいは「なんとなく調子が悪い」と感じるだけでも、まずは受診していただいて構いません。他の疾患との鑑別も含めて診察します。
何科を受診すればよいですか?
LOH症候群は内科・泌尿器科・男性更年期外来(メンズヘルス外来)で診療しています。当院(内科)では、症状の問診・血液検査・漢方・プラセンタ治療などに対応しています。TRT(注射)については現在供給困難のため、状況に応じて泌尿器科専門医をご紹介する場合があります。
テストステロンの注射はどれくらいの頻度で必要ですか?
日本で保険適用されているテストステロン製剤(エナント酸テストステロン)は、125mgを2週ごと、または250mgを4週ごとに筋肉注射します。ただし現在は製剤の入手が困難な状況です。詳しくは診察時にご確認ください。
TRTを受けると前立腺がんになりやすくなりますか?
最新の研究(27のランダム化試験のメタ分析・TRAVERSE試験)では、適切に管理されたTRTは前立腺がんの発症リスクを増加させないことが示されています。ただし、治療前にPSAと直腸診で前立腺の状態を確認し、治療中も定期的な検査が必要です。PSA 2.0 ng/mL 以上の場合は泌尿器科専門医にご紹介します。
漢方だけでも効果はありますか?
軽〜中等症の場合、漢方薬だけでも疲労感・倦怠感・精神的な症状の改善が期待できます。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・八味地黄丸(はちみじおうがん)などが代表的です。保険適用で処方できます。TRTができない方や副作用を避けたい方にも適しています。
メタボリックシンドロームや糖尿病があります。LOH症候群と関係がありますか?
深い関係があります。肥満・内臓脂肪の増加はテストステロンの低下を引き起こし、逆にテストステロン低下が脂肪を増やすという悪循環が生じることがあります。糖尿病患者でLOH症候群の合併率が高いことも知られており、当院ではメタボ・糖尿病の管理と合わせて診察します。減量・運動療法でテストステロン値が改善するケースも多くあります。
30代ですが、LOH症候群になることはありますか?
LOH症候群は通常40代以降に多いですが、強いストレス・睡眠不足・肥満・生活習慣の乱れ・過度な運動などにより、若い年代でもテストステロンが低下することがあります。原因によっては内分泌疾患(下垂体・精巣の問題)が背景にある場合もあるため、若い方でも気になる症状がある場合はご相談ください。
しおざき内科 副院長

副院長 塩﨑 雅崇(しおざき まさたか)

しおざき内科クリニック 副院長

LOH症候群(男性更年期障害)の診療を担当しています。「なんとなく不調」「年齢のせいかも」と感じたままにせず、まずは血液検査で原因を確認することをお勧めします。漢方・プラセンタ・ED治療薬など、それぞれの方に合った方法を一緒に考えます。お気軽にご相談ください。

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