1RSウイルス感染症とは

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児の気道感染症の主要な原因ウイルスです。成人では軽い風邪症状にとどまることがほとんどですが、生後6か月未満の乳児では細気管支炎や肺炎に重症化しやすく、入院加療が必要になるケースもあります。

2歳までにほぼすべての乳幼児が感染を経験し、初感染時の約20〜30%で細気管支炎や肺炎が出現します。また近年は高齢者の重症肺炎の原因としても注目されており、乳幼児と高齢者の両方に対するワクチン開発が進んでいます。

2流行状況・疫学データ

世界における疾患負担

約3,300万
5歳未満の年間RSV
急性下気道感染(世界)
約6万人
5歳未満のRSV関連
院内死亡(世界・年間)
約45%
死亡のうち生後6か月
未満が占める割合

Shi T, et al. Lancet. 2017;390(10098):946-958.

月齢別の重症化リスク

生後間もない時期ほどRSウイルス感染症による入院・重症化のリスクが高く、特に生後3か月未満は危険な時期です。

2〜4倍
生後3か月未満の入院
リスク(6〜12か月比)
ほぼ100%
2歳までに感染を
経験する割合
20〜30%
初感染で細気管支炎・
肺炎に進展する割合

生後3か月未満の時期はちょうど「母体からの抗体が消失しはじめるタイミング」と重なります。妊婦への接種により母体抗体を胎盤経由で移行させることで、この時期の感染リスクを下げることが期待されます。

Hall CB, et al. N Engl J Med. 2009;360(6):588-598.

国内の流行状況と季節変化

従来は「冬のウイルス」として知られていましたが、2022年以降は6〜8月に定点当たり報告数がピークに達するパターンが続いています。夏生まれの赤ちゃんは生後まもなく流行期に入ることになるため、妊娠中の早めの接種計画が重要です。

国立感染症研究所 感染症発生動向調査(IDWR)週報 各年版

アブリスボ®(RSVpreF)の有効性:MATISSEトライアル(Phase 3)

アブリスボ®(RSVpreF:二価プレフュージョンFワクチン)の妊婦接種による乳児保護効果は、世界18か国・約7,400人の妊婦を対象とした大規模第3相試験(MATISSE試験)で検証されました。

57.1%
生後90日以内の
重症RSV感染予防
51.3%
生後180日以内の
重症RSV感染予防
34.7%
生後90日以内の
RSV関連入院予防

特に生後3か月以内という最も重症化リスクが高い時期に対して有効性が確認されています。

Kampmann B, et al. Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants. N Engl J Med. 2023;388(16):1451-1464.

3治療について

RSウイルス感染症に対する特効薬(抗ウイルス薬)は現在ありません。インフルエンザのタミフル®やコロナのパキロビッド®のような特異的治療薬はなく、治療は対症療法が中心となります。

有効な治療手段がないからこそ、かかる前のワクチンによる予防が最も重要です。

4RSウイルスワクチンの種類

当院では2種類のRSウイルスワクチンを取り扱っています。対象・目的が異なりますので、ご自身に合ったワクチンをご確認ください。

ワクチン名対象接種時期費用
アブリスボ®
(RSVpreF・二価)
妊婦(妊娠24〜36週6日)
※高齢者(60歳以上)への接種も可
妊娠24〜36週無料(渋谷区・23区内妊婦:定期接種)
高齢者(自費):30,000円
アレックスビー®
(mRNA・1価)
60歳以上(ハイリスク疾患者は50歳以上)
妊婦への接種不可
通年(要予約)26,000円(全額自費)

アブリスボ®の仕組み

アブリスボ®は、RSウイルスが細胞に侵入する際に必要な「Fタンパク質(プレフュージョン型)」を抗原とした不活化ワクチンです。接種によって母体内に産生された抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、出生直後から赤ちゃんを守ります(母体免疫移行)。

5公費対象・申請方法(渋谷区・23区内在住)

補助対象条件

対象となる方

渋谷区における予診票の受け取り方

妊娠届の時期予診票の受け取り方法
2026年3月31日までに届出済みの方渋谷区より個別に郵送されます
2026年4月1日以降に届出の方「母と子の保健バッグ」に同封されます
予診票を紛失・未受領の方電子申請・電話・区役所窓口来庁で再発行可能

*予診票がない場合は全額自費(30,000円)となります。接種前に必ずご確認ください。

6接種できない場合・副反応

接種にあたっての注意事項

妊娠高血圧症候群などハイリスク妊娠の方:産科主治医の判断が必要です。接種前にかかりつけ産科医にご相談ください。

妊娠37週0日以降の方:通常は接種対象外です(補助対象外・原則自費)。やむを得ず接種する場合は医師の判断のもと実施されますが、接種後14日以内に出生した乳児への有効性は確立していないため、予定日の余裕をもって接種することを強くお勧めします。

主な副反応

アブリスボ®の主な副反応は接種部位の局所反応で、多くは数日以内に改善します。全身性の重篤な副反応は臨床試験で増加は認められませんでした。

副反応頻度備考
接種部位の痛み約43.8%数日以内に改善
頭痛約30%一過性
筋肉痛約20%一過性
倦怠感約18%一過性
その他10%未満接種部位の発赤・腫脹、嘔気・嘔吐、38℃以上の発熱など

⚠ 接種後に高熱・強い腹痛・胎動の減少など通常と異なる症状を感じた場合は、速やかに産科担当医または当院にご連絡ください。

予約方法

渋谷区・23区内の妊婦の方は無料で接種いただけます