【2024〜2026年の流行状況】
2024年に百日咳の報告数が急増し、2025〜2026年も高い流行が続いています。特に成人・高齢者での感染例が増加しており、ワクチン免疫が低下した世代を中心に感染が広がっています。乳幼児への感染源となるケースも多く、周囲の大人のワクチン接種が重要です。

百日咳の特徴的な症状と流行状況(しおざき内科) ▲ 百日咳の特徴(しおざき内科 作成)タップ・クリックで拡大

1百日咳とは

百日咳はBordetella pertussis(百日咳菌)という細菌による感染症で、飛沫感染・接触感染で広がります。感染力が非常に強く(基本再生産数R₀≒5〜17)、ワクチン未接種者が感染者に接触した場合の感染率は70〜100%ともいわれます。

名前の通り「百日(約3か月)にわたって咳が続く」ことが特徴で、発症から回復まで長期間を要します。適切な抗菌薬治療を早期に開始することで他者への感染拡大を防ぎ、症状を軽減できます。

項目内容
原因菌Bordetella pertussis(百日咳菌)
感染経路飛沫感染・接触感染
潜伏期間7〜10日(最長21日)
感染力のある期間発症前2週間〜発症後3週間(抗菌薬開始後5日で感染力消失)
好発年齢乳幼児に重症例が多い。成人は免疫低下により再感染しやすい。
届出5類感染症(全数報告)

23つの病期と症状

百日咳は発症後に3つの病期(カタル期・痙咳期・回復期)を経過するのが特徴です。病期によって症状と感染力が大きく異なります。

① カタル期(発症〜1〜2週間)

普通のかぜと区別がつきにくい時期です。この時期が最も感染力が強く、周囲への感染リスクが高い状態です。

② 痙咳期(2〜6週間)

百日咳に特徴的な激しい咳が出る時期です。子どもでは「ヒューッ」という笛のような吸気音(スタッカート様咳嗽+笛声)が聞こえることがあります。

⚠ 乳幼児(特に生後6か月未満)は重症化リスクが高い

乳幼児では「ヒューッ」という吸気音が出ないことも多く、無呼吸・チアノーゼ(顔が青くなる)・痙攣を起こすことがあります。咳き込んで顔色が悪くなる、息が止まっているように見えるなど異変を感じたら、ためらわず救急を受診してください。

③ 回復期(6〜12週間)

徐々に咳の頻度・強度が低下します。ただし、他の感染症(かぜ・インフルエンザなど)にかかると痙咳発作が再燃することがあります。

病期期間の目安主な症状感染力
カタル期1〜2週間鼻水・軽い咳・微熱最も強い
痙咳期2〜6週間激しい咳発作・嘔吐・ウープ音あり(抗菌薬開始5日後から低下)
回復期6〜12週間咳が徐々に軽快ほぼなし

3大人の百日咳

成人の百日咳は典型的なウープ音がなく、長引く咳だけという非典型的な経過をとることが多いため、診断が遅れがちです。

大人の百日咳を疑うポイント

大人が感染した場合、自分自身の症状は比較的軽くても、ワクチン未接種の乳幼児に感染させてしまう危険性があります。「自分は大丈夫だから」と放置せず、長引く咳は早めに受診して検査を受けることをお勧めします。

4検査・診断

百日咳の確定診断には複数の検査法があります。発症からの期間によって適した検査が異なります。

検査適した時期内容・特徴
PCR検査(鼻咽頭ぬぐい液)発症〜3週間感度が高く確定診断に有用。結果まで数日〜1週間程度。
迅速抗原検査発症〜2週間当日結果判明。感度はPCRより低いが早期スクリーニングに使用。
抗体価測定(血液検査)発症2〜4週間以降IgM・IgA・IgG抗体の上昇を確認。長引く咳の後期診断に有用。
培養検査カタル期〜痙咳期前半確定診断の金標準だが結果まで1〜2週間かかる。

※当院では症状・発症時期に応じて適切な検査をご提案します。「3週間以上の長引く咳」の場合は血液検査(抗体測定)が有効なことが多いです。

5治療

百日咳の治療にはマクロライド系抗菌薬が第一選択です。カタル期に開始した場合は症状の軽減・短縮に有効ですが、痙咳期に入ってからは感染拡大防止のための内服が主目的となります。

薬剤特徴
アジスロマイシン5日間内服。成人・小児・乳幼児に使用。1日1回で服薬しやすい。
クラリスロマイシン7日間内服。成人・小児に広く使用される。
エリスロマイシン14日間内服。乳幼児にも使用可能。
抗菌薬内服で感染力は早期に消失します

適切な抗菌薬を開始してから5日間で、他者への感染力はほぼなくなります。咳そのものは長く続いても、抗菌薬の内服を早期に完了させることで、職場・学校・家族への感染拡大を防ぐことができます。

3週間以上続く咳でお悩みの方、百日咳が心配な方は、ぜひ当院にご相談ください。

6登校・登園の基準

百日咳は学校保健安全法の第二種感染症に指定されており、出席停止の基準があります。

出席停止の解除条件(学校保健安全法)

特有の咳が消えるまで、または5日間の適切な抗菌薬療法が終了するまで

抗菌薬を開始してから5日間が経過し、全身状態が良好であれば、咳が続いていても登校・登園が可能です。学校・園によっては「医師の登校許可証」が必要な場合がありますので、受診時にお申し出ください。

7ワクチン・予防

日本のワクチン事情:DPT(3種混合)/Tdapの違い

百日咳を含むワクチンについては、日本と海外で利用可能なワクチンが異なります。

ワクチン成分対象日本での承認
5種混合ワクチン(DTaP-IPV-Hib)ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・Hib乳幼児(定期接種)承認・実施中
3種混合ワクチン(DPT/DTaP)ジフテリア・百日咳・破傷風定期接種を受けていない方・追加接種希望者(自費)承認・自費対応
Tdap(成人用)ジフテリア・百日咳・破傷風(低用量)成人・10代への追加接種日本未承認

乳幼児への5種混合ワクチン定期接種

乳幼児には5種混合ワクチン(DTaP-IPV-Hib)が定期接種として設定されており、生後2か月から接種を開始します。スケジュールは以下のとおりです。

回数接種時期の目安
1回目生後2〜3か月
2回目1回目から3〜8週間後
3回目2回目から3〜8週間後
4回目(追加)3回目から12〜18か月後
当院での5種混合ワクチン接種

当院では5種混合ワクチンの定期接種に対応しています。定期接種の対象となるお子さんは公費で接種できます。接種スケジュールのご相談はお電話・LINEにてお気軽にどうぞ。

定期接種を受けていない方・追加接種希望の方:3種混合ワクチン(DPT)

定期接種の機会を逃した方や、免疫の補強を希望される方には、国内承認済みの3種混合ワクチン(DPT/DTaP:ジフテリア・百日咳・破傷風)の自費接種をお勧めします。海外で広く使われるTdap(成人用低用量)は日本未承認ですが、DPTは国内でも承認されており、費用面・安全性の両面から現実的な選択肢です。

内容
ワクチン名3種混合ワクチン(DPT/DTaP)
対象定期接種未完了の方・接種歴不明の方・免疫補強を希望される方
費用(自費)8,500円(税込)/1回
接種回数接種歴・免疫状況により医師が判断します(要相談)
当院での3種混合ワクチン(DPT)自費接種

当院では3種混合ワクチン(DPT)の自費接種に対応しています(8,500円税込/1回)。「百日咳にかかったことがない」「子どものころに接種したか不明」という方もお気軽にご相談ください。

成人への百日咳ワクチン(Tdap)は日本未承認

海外では成人・10代向けのTdap(低用量混合ワクチン)が広く使用されていますが、日本国内ではTdapはまだ承認されていません。そのため、成人が百日咳に対してワクチン予防を希望する場合は、国内承認済みの3種混合(DPT)が現実的な選択肢となります。

⚠ Tdapについてのご注意

Tdapの日本での承認・導入については現在も議論が続いており、今後の動向によって変わる可能性があります。「Tdapを打ちたい」というご要望については、現時点では国内承認済みの3種混合ワクチン(DPT)のご提供となりますのでご了承ください。