【2025〜2026年の流行状況】
2024年に日本で溶連菌咽頭炎の報告数が過去最多水準を記録し、2025〜2026年も引き続き高い流行が続いています。特に九州・福岡県での増加が報告されており、関東でも注意が必要な状況です。また、より重症化しやすい劇症型溶連菌感染症(STSS)についても、報告例が例年を上回る傾向が続いています。

1溶連菌感染症とは

溶連菌感染症とは、A群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus, GAS)という細菌による感染症です。飛沫感染・接触感染で広がり、感染してから2〜5日の潜伏期間を経て発症します。学校や保育園での集団感染が起こりやすく、秋〜春(11月〜翌5月ごろ)に多い傾向がありますが、年間を通じて見られます。

適切に治療すれば数日で改善しますが、治療を途中でやめると重篤な合併症を引き起こすリスクがあるため、処方された抗菌薬を最後まで飲み切ることが非常に重要です。

病型特徴
溶連菌咽頭炎・扁桃炎最も多い。急な発熱・のどの痛み。5〜15歳に多いが成人にも。
猩紅熱(しょうこうねつ)咽頭炎に加えて全身の砂粒状発疹、いちご舌を伴う。主に学童期。
溶連菌性皮膚感染症虫刺されや傷口からの感染。蜂窩織炎・丹毒など。
劇症型溶連菌感染症(STSS)筋肉・筋膜・血流へ侵入し急速に重篤化。詳細は下記参照

2症状

溶連菌咽頭炎の典型的な症状

症状詳細
急な発熱38〜40℃の高熱が急激に出ることが多い
のどの痛み唾液を飲み込むのもつらいほどの強い咽頭痛・嚥下痛
扁桃の赤み・腫れ扁桃に白い膿(白苔)が付着することが多い
頭痛発熱に伴うことが多い
腹痛・嘔吐特に幼児・小児で見られることがある
首のリンパ節の腫れ顎の下〜首のリンパ節が腫れて押すと痛む
溶連菌咽頭炎の典型的な症状(急な発熱・のどの痛み・扁桃の赤み・首のリンパ節の腫れ)
溶連菌咽頭炎の典型的な症状(しおざき内科 作成)
ウイルス性のかぜとの大きな違い

溶連菌感染症では咳・鼻水・くしゃみがほとんど出ません。「熱はあるのに鼻水や咳がない」「のどが急に痛くなった」という場合は溶連菌の可能性が高く、迅速検査をお勧めします。

猩紅熱(しょうこうねつ)の追加症状

溶連菌が産生する毒素によって皮膚や舌にも変化が出る病型です。咽頭炎の症状に加えて以下が見られます。

学校保健安全法上も第二種感染症に区分されており、溶連菌咽頭炎と同様に抗菌薬による治療が必要です。

3検査・診断

当院では溶連菌迅速抗原検査を行っています。のどの奥を綿棒でぬぐい、5〜10分程度で結果が判明します。

検査内容
迅速抗原検査当日結果判明。感度は80〜90%程度。咽頭ぬぐい液を使用。
咽頭培養検査迅速検査が陰性でも症状が強い場合に検討。結果まで2〜3日かかる。
尿検査治療後2〜4週間後に、合併症(急性糸球体腎炎)のチェックとして行うことがある。

※迅速検査は100%ではないため、症状が強い場合や再検査が必要な場合は医師の判断で培養検査を追加することがあります。

4治療

溶連菌感染症はウイルス性のかぜとは異なり、抗菌薬(抗生物質)による治療が有効です。通常、治療開始後24〜48時間で発熱やのどの痛みが改善してきます。

抗菌薬の種類特徴
ペニシリン系(アモキシシリンなど)第一選択薬。10日間の内服が基本。小児・成人ともに使用。
セフェム系(セフジトレンなど)ペニシリンアレルギーのない方でも選択される。
マクロライド系(クラリスロマイシンなど)ペニシリンアレルギーのある方に。近年は耐性菌の増加に注意。
⚠ 抗菌薬は最後まで飲み切ることが大切です

症状が改善しても、指示された期間(通常10日間)は必ず飲み続けてください。途中でやめると菌が完全に消えず、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。「熱が下がったから大丈夫」という判断で自己中断しないようにしてください。

5合併症

溶連菌感染症を適切に治療しなかった場合や抗菌薬を飲み切らなかった場合に、以下の合併症が起こることがあります。

合併症時期・内容
急性リウマチ熱感染から1〜4週間後に発症。関節炎・心臓弁膜症(心炎)・皮膚症状など。心弁膜に後遺症を残す可能性がある。
急性糸球体腎炎感染から1〜3週間後に発症。血尿・たんぱく尿・むくみ・高血圧。多くは自然回復するが経過観察が必要。
扁桃周囲膿瘍扁桃の周囲に膿が貯まる。強いのどの痛み・開口障害。外科的処置が必要になることも。

特にリウマチ熱は繰り返す溶連菌感染で心臓弁膜に障害が蓄積するため、抗菌薬の飲み切り+定期的な受診が重要です。治療後に尿検査をお願いすることがあるのは、急性糸球体腎炎の早期発見のためです。

6登校・登園の基準

溶連菌感染症(猩紅熱を含む)は学校保健安全法の第二種感染症に指定されており、出席停止の基準があります。

出席停止の解除条件(学校保健安全法)

抗菌薬による適切な治療を開始してから24時間以上経過し、解熱していて全身状態が良好であること

症状が落ち着いても、抗菌薬は処方された期間(通常10日間)まで飲み切ってください。医師が「登校・登園可」と判断した場合でも、引き続き内服を続ける必要があります。学校・園によっては「医師の証明書(登校許可証)」を求めることがありますので、受診時にお申し付けください。

7劇症型溶連菌感染症(STSS)について

劇症型溶連菌感染症(Streptococcal Toxic Shock Syndrome, STSS)は、A群溶連菌が喉だけでなく血流・筋肉・筋膜・軟部組織へと広がり、急速に全身状態が悪化する重篤な感染症です。「人食いバクテリア」と報道されることがありますが、正確には壊死性筋膜炎を合併した状態を指します。

こんな症状がある場合はすぐに救急受診してください

上記は医療機関での緊急対応が必要な状態です。当院では診察・紹介対応を行いますが、入院・ICU管理が必要な場合は速やかに高次医療機関へご案内します。

STSSの特徴とリスク因子

項目内容
感染経路傷口・皮膚からの侵入が多い。のどの感染から広がることもある。
進行速度数時間〜数日で急速に悪化する。早期診断・治療が予後を大きく左右する。
リスクが高い方高齢者、糖尿病・慢性疾患のある方、免疫機能の低下した方、NSAIDs(イブプロフェンなど)を使用中の方、水痘(みずぼうそう)に感染中の方など
治療ICUでの集中管理、大量の抗菌薬点滴、壊死組織の外科的切除(デブリードマン)が必要になることも。
致死率30〜50%と報告されており、早期介入が不可欠。
NSAIDsについての注意

市販の解熱鎮痛薬のうちイブプロフェン(ブルフェン®など)は、溶連菌感染症の経過中に劇症化リスクを高める可能性が指摘されています。発熱・咽頭痛の際の解熱鎮痛薬はアセトアミノフェン(カロナール®など)の使用を検討してください。

のどの痛み・発熱が続く方は、お気軽にご受診ください。当院では溶連菌迅速検査を当日実施しています。