1.糖尿病とは

糖尿病は、インスリンの作用不足により慢性的に血糖値が高くなる代謝性疾患です。長期的に高血糖が続くと、網膜症・腎症・神経障害といった細小血管合併症、心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患などの大血管合併症を引き起こします。

約1,000万人
日本の糖尿病が強く疑われる成人(推計)
出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
約1,000万人
糖尿病予備群(境界型)の推計
日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」
年5〜10%
予備群から糖尿病へ進展する割合

糖尿病の分類

分類特徴
1型糖尿病自己免疫などによりインスリン分泌細胞が破壊。インスリン注射が必須。小児〜若年発症が多いが、成人発症もあり。
2型糖尿病インスリン分泌低下+インスリン抵抗性。日本の糖尿病の約95%を占める。食事・運動・薬物療法で管理。
その他の特定機序による糖尿病遺伝性・薬剤性・膵疾患・内分泌疾患などに伴うもの。

2.当院の糖尿病診療体制

糖尿病専門医・肥満症専門医・総合内科専門医・かかりつけ医機能届出機関として、地域の糖尿病診療を担っています。

当院の特徴
  • 糖尿病専門医による保険診療
  • かかりつけ医機能報告(1号機能)届出済 ─ 慢性疾患の継続的な管理に対応
  • FreeStyleリブレ2(持続血糖モニター)の積極活用 ─ 食後血糖・夜間血糖の見える化
  • 食事・運動指導を診察ごとに実施
  • 合併症スクリーニング(眼科・腎臓・神経)の定期評価と連携
  • SAS(睡眠時無呼吸症候群)併存への対応も同院内で完結
  • ✅ 内科専門外来として、糖尿病以外の生活習慣病(高血圧・脂質異常症・痛風)も総合的に管理

こんな方にお勧めします

こんな方当院でできること
健康診断で血糖値・HbA1cを指摘された方境界型・糖尿病型のいずれも、早期介入で進展リスクを下げられます。
糖尿病と診断されたが受診できていない方放置すると合併症リスクが大幅に上がります。早めの受診を。
他院から転院希望の方処方継続・治療計画見直しに対応。お薬手帳・診療情報提供書をお持ちください。
食後の眠気・倦怠感が気になる方食後血糖スパイクが背景にある可能性。CGM活用で見える化できます。
家族に糖尿病歴がある方遺伝的素因がある場合は早めのスクリーニングをお勧めします。

3.検査・診断基準

血糖値・HbA1cの判定基準

判定基準値
正常型空腹時血糖値 < 100 mg/dL / HbA1c < 5.6%
境界型(糖尿病予備群)空腹時血糖値 100〜125 mg/dL / HbA1c 5.6〜6.4%
糖尿病型空腹時血糖値 ≥ 126 mg/dL / HbA1c ≥ 6.5% あるいは随時血糖 ≥ 200 mg/dL
出典:日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド 2024-2025」

当院で実施可能な検査

  • 血液検査(血糖値・HbA1c・脂質・肝機能・腎機能・電解質など総合評価)
  • 尿検査(尿糖・尿アルブミン → 腎症の早期発見)
  • 食後血糖値の評価(食事から一定時間後の採血により、食後高血糖・血糖スパイクの疑似的な評価が可能です。OGTTのような正式な負荷試験は当院では実施しておりません)
  • 持続血糖モニター(FreeStyleリブレ2):1分ごとの血糖を14日間記録
  • 必要時は近隣の連携医療機関で頸動脈エコー・心電図・腹部エコー・心血管MDCT・MRI等も実施

4.糖尿病治療の柱

糖尿病治療の基本は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の三本柱です。当院では一人ひとりの生活背景・体質に合わせて、無理なく続けられる治療を一緒に組み立てます。

食事療法

「カロリー制限」だけでなく、食事の順序(野菜→たんぱく質→炭水化物)・速度・タイミングといった行動的なアプローチを重視します。極端な糖質制限ではなく、続けられるバランスを医師と相談しながら決めていきます。

運動療法

食後30〜60分のウォーキングが血糖スパイクを抑えるのに有効です。週150分以上の有酸素運動+週2回の筋トレが日本糖尿病学会の推奨内容となっています。当院では運動制限がある方への代替プランもご提案します。

薬物療法

食事・運動だけで目標HbA1cに到達しない場合や、診断時から薬物療法が必要な場合は、患者さんの病態に合わせて経口血糖降下薬・注射薬を選択していきます。詳しくは下記「薬物療法」セクションをご参照ください。

5.糖尿病の薬物療法

日本糖尿病学会のガイドラインに沿って、患者さんの病態(インスリン分泌能・抵抗性・肥満の有無・合併症)に応じて薬剤を選択します。

経口血糖降下薬

薬剤分類主な作用・特徴
メトホルミン(ビグアナイド)肝臓の糖新生抑制・インスリン抵抗性改善作用を持ちます。2型糖尿病の第一選択薬として国際的にも推奨されています。
DPP-4阻害薬食後血糖を緩やかに改善します。低血糖リスクが少なく高齢者にも使いやすい薬剤です。
SGLT2阻害薬尿から糖を排泄します。心血管・腎保護効果も報告されており、心不全・慢性腎臓病合併例に好まれます。
α-グルコシダーゼ阻害薬食後血糖の上昇を緩やかにします。境界型・食後血糖優位の方に向いています。
SU薬・グリニド薬インスリン分泌を促進します。低血糖に注意が必要です。
チアゾリジン薬インスリン抵抗性を改善します。脂肪肝合併例に有効です。
ツイミーグ®(イメグリミン)ミトコンドリア機能を介してインスリン分泌促進+インスリン抵抗性改善の両方の作用を持つ国内発売の新規薬剤です。低血糖リスクが少なく、他剤との併用にも適しています。

注射薬(GLP-1製剤・インスリン)

GLP-1製剤(注射・経口)

食欲抑制・インスリン分泌促進・体重減少効果のあるGLP-1製剤は、2型糖尿病治療の重要な選択肢の一つです。当院では以下の2型糖尿病の保険適応薬剤を取り扱っています。

薬剤剤型・投与適応
マンジャロ®(チルゼパチド)週1回 皮下注射2型糖尿病(保険適応)
リベルサス®(セマグルチド)1日1回 経口2型糖尿病(保険適応)
オゼンピック®(セマグルチド)週1回 皮下注射2型糖尿病(保険適応)
トルリシティ®(デュラグルチド)週1回 皮下注射2型糖尿病(保険適応)
ビクトーザ®(リラグルチド)1日1回 皮下注射2型糖尿病(保険適応)

糖尿病合併症の予防・体重コントロール・心血管リスク低減の観点から、患者さんの状態に応じて使い分けています。2型糖尿病の保険診療として処方しております。

インスリン療法

1型糖尿病・インスリン依存状態・妊娠糖尿病・薬物療法でコントロール困難な2型糖尿病に対してインスリン製剤を用いた治療を行います。基礎インスリン・追加インスリン・混合型と種類があり、病態に応じて選択しております。

肥満を伴う2型糖尿病の方へ
肥満(BMI 25以上)を伴う2型糖尿病の方は、血糖管理に加えて体重コントロールが極めて重要です。当院では2型糖尿病の保険診療として、マンジャロ®・リベルサス®・オゼンピック®などのGLP-1製剤を活用し、食事・運動指導とCGM(リブレ2)を組み合わせ、血糖と体重の両方を見える化します。
*糖尿病合併のない単純な肥満症治療(自由診療)はGLP-1ダイエット外来をご参照ください。

6.持続血糖モニター(FreeStyleリブレ2)

当院では、持続血糖モニター(CGM:Continuous Glucose Monitoring)を糖尿病診療の中核ツールとして積極的に活用しています。腕に装着するセンサーが1分ごとに血糖値を14日間記録し、食後・夜間・運動時の血糖変動を一目で把握できます。

📊

FreeStyleリブレ2(持続血糖モニター)

血糖スパイク・糖尿病予備群の見える化に。仕組み・装着方法・費用・予備群の方への適応など、CGMの詳細を専用ページで解説しています。

7.メタボリックドミノ ─ 糖尿病が引き起こす連鎖

糖尿病は単独の病気ではなく、肥満を起点に高血圧・脂質異常症などと連鎖して動脈硬化を進行させ、最終的に心血管疾患・脳卒中・認知症などを引き起こす「連鎖反応の病気」です。この連鎖の概念は、慶應義塾大学の伊藤裕教授によって「メタボリックドミノ」として提唱されました。

メタボリックドミノの概念図
▲ メタボリックドミノの概念図(伊藤裕教授, 2003 を改変)
出典:伊藤裕『日本臨牀』61(10), 1837-1843, 2003

ドミノの流れ

  • 生活習慣の乱れ(過食・運動不足・喫煙・睡眠不足・ストレス)
  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満) ─ ドミノの最初の一枚
  • インスリン抵抗性の発生
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症(メタボリックシンドロームの3要素)が同時進行
  • 動脈硬化の進行
  • 網膜症・腎症・神経障害などの細小血管合併症/心血管疾患・脳卒中・認知症などの大血管・全身性合併症
  • 健康寿命の短縮・QOLの低下
重要なのは、ドミノは「肥満」という早い段階で食い止められるという点です。
内臓脂肪を減らすこと・血糖/血圧/脂質を整えること・禁煙・睡眠の質の改善など、上流での介入がその後の合併症の連鎖を大きく止める力を持ちます。「もう手遅れ」ということはなく、どの段階でも次のドミノを止める意義があります。

当院での取り組み

当院では、糖尿病単独の管理にとどまらず、肥満・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群(SAS)などを総合的に評価・治療することで、ドミノの上流からの介入を心がけています。生活習慣の見直し・必要時の薬物療法・定期的な合併症スクリーニングを行っております。

出典:伊藤裕『日本臨牀』61(10), 1837-1843, 2003 / 日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」

8.高齢者糖尿病とフレイル

高齢者の糖尿病管理においては、近年「フレイル(虚弱)」との関係が重要視されています。フレイルとは、加齢に伴って心身の機能が低下し、要介護に向かう中間段階の状態を指します。糖尿病とフレイルは相互に悪影響を及ぼし合うことが分かってきており、高齢者の糖尿病治療では従来とは異なる視点が求められます。

フレイルの定義(J-CHS基準)

日本版CHS(Cardiovascular Health Study)基準では、以下の5項目のうち3項目以上該当でフレイル、1〜2項目でプレフレイル(前段階)と判定します。

項目判定基準(おおまかな目安)
体重減少6か月で2〜3kg以上の意図しない体重減少
筋力低下握力の低下(男性28kg未満/女性18kg未満)
疲労感「ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする」
歩行速度の低下通常歩行速度が1.0m/秒未満
身体活動の低下軽い運動・定期的な運動の習慣がない
出典:Satake S, Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020;20(10):992-993(J-CHS基準)

糖尿病とフレイルの双方向の関係

方向具体的なメカニズム
糖尿病 → フレイル高血糖による筋タンパク分解の亢進・筋肉量低下(サルコペニア)/神経障害による身体機能低下/合併症による活動性低下/低栄養
フレイル → 糖尿病管理の悪化低血糖の自覚が乏しくなり重症低血糖リスク上昇/服薬コンプライアンス低下/食事・運動療法の継続困難/認知機能低下による自己管理困難

高齢者・フレイルの方の血糖管理目標

⚠ 高齢者では「厳しすぎる血糖管理」がかえって有害になることがあります。
低血糖は転倒・骨折・認知機能低下・心血管イベントのリスクを高めます。日本老年医学会と日本糖尿病学会は、高齢者の特性に応じた個別のHbA1c目標を推奨しています。
カテゴリーHbA1c目標(重症低血糖が懸念される薬剤使用時)
カテゴリーⅠ 認知機能正常+ADL自立7.0%未満(下限6.5%〜)
カテゴリーⅡ 軽度認知障害/IADL低下7.0%未満(下限7.0%〜)/薬剤により8.0%未満
カテゴリーⅢ 中等度以上の認知症/基本的ADL低下/多くの併存疾患8.0%未満(下限7.5%〜)
出典:日本老年医学会・日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」
当院の高齢者糖尿病ケア
  • 個別のHbA1c目標設定:年齢・認知機能・併存疾患・支援体制を踏まえて目標を設定
  • 低血糖を避ける処方設計:SU薬・グリニド薬の使用を慎重にし、DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬(適応評価のうえで)・ツイミーグ®などを優先
  • サルコペニア対策:たんぱく質摂取の確保と無理のない運動指導
  • 家族・ケアマネージャーとの連携:かかりつけ医機能届出機関として、介護保険サービスとの調整も対応
  • 転倒・誤嚥・認知機能低下などのフレイル関連リスクへの目配り

「歳を取ったからこそ、無理のない血糖管理を」──これが当院の高齢者糖尿病診療の基本姿勢です。

9.糖尿病合併症の管理

当院では血糖管理に加えて、以下の合併症を定期的にスクリーニングしております。必要に応じて高次医療機関と連携して診療しています。

合併症当院での評価・対応
糖尿病性網膜症年1回以上の眼底検査を眼科専門医にご紹介しています。早期発見が失明予防の鍵となります。
糖尿病性腎症尿アルブミン・eGFRで早期評価。腎症進行時は腎臓内科と連携しています。
糖尿病性神経障害足のしびれ・痛みの問診と診察。アキレス腱反射・触覚検査などを実施。
大血管合併症(脳梗塞・心筋梗塞)頸動脈エコー・心電図に加え、必要時は連携医療機関での心血管MDCT(冠動脈CT)もご紹介しています。脂質異常症・高血圧の同時管理が重要です。
糖尿病性足病変足の観察・フットケア指導。靴擦れ・うおのめなどの予防。
歯周病糖尿病と双方向に悪影響。歯科受診の定期化をお勧めします。

10.費用・受診の流れ

受診の流れ

ステップ内容
① 初診
内容問診・身体診察・血液検査・尿検査。健康診断結果・お薬手帳をお持ちください。
② 診断・治療方針説明
内容検査結果をもとに、目標HbA1c・治療方針をご説明します。
③ 定期通院
内容状態に応じて1〜2か月ごとに通院いただきます。HbA1c推移・合併症評価を継続します。
④ 必要時
内容リブレ2装着・専門医療機関への紹介を行います。

費用(保険診療)

糖尿病の診療は保険診療です。具体的な費用は使用薬剤・検査内容で変動しますが、目安は以下の通りです。

項目3割負担の場合の目安
初診(診察+血液検査)3,000〜5,000円程度
再診(診察)500〜1,500円程度
再診(診察+血液検査)2,000〜3,500円程度
FreeStyleリブレ2(インスリン治療中)センサー2個分 約3,750円/月
FreeStyleリブレ2(自費)7,700円/個(14日間)
*薬剤費は処方内容により変動します。*上記は保険診療の概算であり、実費は窓口でご確認ください。