1適応拡大の経緯 ─ 18歳以上の高リスク成人へ
アレックスビー®(Arexvy)とは
アレックスビー®はGSK社が開発した遺伝子組換えRSウイルスワクチン(RSVPreF3 OA)です。RSウイルスが細胞に侵入する際の鍵となる「Fタンパク質(プレフュージョン型)」を抗原とし、AS01Eアジュバントと組み合わせることで強力な免疫応答を誘導します(※mRNAワクチンではありません)。日本では2024年1月に60歳以上を対象に発売されました。
適応年齢の拡大の歩み
| 時期 | 承認・適応 |
|---|---|
| 2024年1月 | 日本で発売開始。60歳以上のすべての成人が対象。 |
| 2025年 | 50〜59歳のリスクグループ(基礎疾患を有する成人)に適応拡大。 |
| 2026年5月 | 18〜49歳のリスクグループ(基礎疾患・免疫低下者を含む)に適応拡大。これにより18歳以上の高リスク成人全体をカバーする日本初のRSVワクチンに。 |
出典:GSK公式プレスリリース 2026 / 厚生労働省 医薬品医療機器総合機構(PMDA)承認情報
2成人RSVの重症化リスク
RSウイルスは「乳幼児の感染症」というイメージが強い一方、成人でも慢性疾患をお持ちの方や免疫が低下した方では重症肺炎・入院・死亡のリスクが高いことが、近年の疫学研究で明らかになっています。インフルエンザと並ぶ「成人の重症呼吸器感染症」として認識が広まりつつあります。
年間入院数(推定)
年間関連死亡(推定)
RSV入院リスク(健常者比)
出典:Falsey AR, et al. N Engl J Med. 2005;352(17):1749-1759 / CDC RSV in Older Adults
RSV感染が特に問題となる成人
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):RSV感染で急性増悪を起こしやすく、入院・呼吸不全のリスクが高い。
- 気管支喘息:成人喘息でもRSVは重要な増悪因子。コントロール不良の方は注意。
- 慢性心疾患(心不全・冠動脈疾患):呼吸器感染をきっかけに心不全増悪が起こりやすい。
- 糖尿病(特にコントロール不良・腎症など合併症あり):感染症全般の重症化リスクが高い。
- 免疫不全:HIV感染、臓器移植後、化学療法中、生物学的製剤・免疫抑制剤使用中など。
- 慢性腎臓病・透析中の方:感染症で容易に全身状態が悪化。
3対象者・高リスクの定義
年齢別の整理
| 年齢 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 60歳以上 | すべての方が接種可能 | 2024年からの当初適応。リスクの有無を問わず接種推奨。 |
| 50〜59歳 | 基礎疾患のある方 | 2025年に適応拡大。下記の高リスク条件に該当する方。 |
| 18〜49歳 | 基礎疾患のある方・免疫低下者 | 2026年5月に新たに適応拡大。下記の高リスク条件に該当する方。 |
| 18歳未満 | 適応外 | 小児への接種は承認されていません。 |
「高リスク」に該当する具体的な条件
以下のいずれかに該当する18〜59歳の方が接種対象となります(医師の問診で適応を確認します)。
| カテゴリー | 具体例 |
|---|---|
| 慢性呼吸器疾患 | COPD、気管支喘息(特に中等症以上)、間質性肺疾患、気管支拡張症など |
| 慢性心血管疾患 | 慢性心不全、冠動脈疾患、弁膜症など(高血圧単独は通常含まれない) |
| 代謝性疾患 | 合併症のある糖尿病、高度肥満(BMI ≧ 40) |
| 慢性腎臓病・肝臓病 | 透析中、慢性腎不全、肝硬変など |
| 免疫不全状態 | HIV感染、固形臓器・造血幹細胞移植後、化学療法中、生物学的製剤・免疫抑制剤使用中、ステロイド長期内服など |
| 血液疾患 | 鎌状赤血球症、白血病・リンパ腫の治療中など |
| 神経・神経筋疾患 | 気道分泌物のクリアランスに影響する疾患(脳卒中後遺症、神経筋疾患など) |
| 長期療養施設入居者 | 集団生活で感染リスクが高い方 |
参考:米国CDC ACIP recommendations / GSK Arexvy 添付文書
「自分は高リスクに該当するか分からない」という方も、まずはご相談ください。お持ちの疾患・服薬内容・治療歴を伺ったうえで、接種の適応を判断します。
妊娠中の方はアブリスボ®(公費・無料)の対象です
妊娠24〜36週の方は、別のRSVワクチン「アブリスボ®」が定期接種(渋谷区・23区在住で公費・無料)の対象です。
4エビデンス・有効性
AReSVi-006試験(60歳以上の発症予防)
60歳以上の成人約25,000人を対象とした第3相試験。重症RSV感染症に対する高い予防効果が示されました。
(LRTD)予防効果
重症LRTD予防効果
持続的な予防効果が確認
出典:Papi A, et al. N Engl J Med. 2023;388(7):595-608 / Ison MG, et al. Clin Infect Dis. 2024
18〜49歳・50〜59歳の高リスク群への拡大根拠
18〜49歳および50〜59歳の高リスク成人への適応拡大は、これらの年齢層を対象とした免疫原性試験(immunobridging study)の結果に基づいています。60歳以上で確認された有効性に劣らない抗体応答が認められたことから、同等の予防効果が期待できると判断されました。
免疫学的応答だけでなく、安全性プロファイルも60歳以上と同等であることが確認されています。
出典:GSK Arexvy 添付文書(2026年改訂版)/ AReSVi-018 試験
5副反応・安全性
アレックスビー®はアジュバント(AS01E)を含むワクチンで、しっかりとした免疫応答が得られる一方、接種後数日間の局所反応・全身反応がやや出やすい傾向があります。多くは数日以内に自然軽快します。
主な副反応(頻度10%以上)
| 副反応 | 頻度 | 備考 |
|---|---|---|
| 接種部位の痛み | 約60% | 最も多い。1〜2日で軽快。 |
| 倦怠感 | 約34% | 接種翌日にピーク、2〜3日で改善。 |
| 筋肉痛 | 約29% | 同上。 |
| 頭痛 | 約27% | 軽度〜中等度が中心。 |
| 関節痛 | 約18% | 一過性。 |
| 発熱(38℃以上) | 約2% | 頻度は低い。アセトアミノフェンで対応可。 |
出典:Papi A, et al. NEJM. 2023 / GSK Arexvy 添付文書
発熱・倦怠感などが出ることがあるため、接種翌日に重要な予定がある方は接種日を調整することをお勧めします。インフルエンザワクチンや他のワクチンとの同時接種も可能ですが、副反応が重なって出る可能性があります。詳しくは接種前にご相談ください。
接種を控えるべき方・要注意の方
- 過去にアレックスビー®成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方(接種不可)
- 重度の急性疾患で発熱中の方(軽快後に接種)
- 過去の予防接種でギラン・バレー症候群を発症したことがある方(医師と要相談)
- 抗凝固薬服用中の方(接種は可能ですが、止血の確認に時間を要します)
6予約・接種費用
接種費用(全額自費)
| 項目 | 費用(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| アレックスビー®(Arexvy) | 26,000円 | 1回接種。現在のところ追加接種は推奨されていません。 |
*費用は予告なく変更することがあります。最新の価格は受付・電話でご確認ください。
*現時点で公費補助の対象ではありません。
入荷状況
- 当院では常備在庫は持っておりませんが、事前のご予約をいただければ卸より入荷可能です(通常1〜数営業日で入荷)。
- 流行・供給状況によってお時間をいただく場合があります。お早めにお申し込みください。
接種までの流れ
- お電話・LINE・ネット予約でご相談ください。基礎疾患の内容を簡単にお伺いします。
- ワクチンを取り寄せ、接種日をご案内します。
- 接種当日:本人確認書類(マイナ保険証など)、お薬手帳をお持ちください。
- 診察・問診のうえ接種。接種後は15〜30分院内で経過観察していただきます。
